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搬送先の広池医院で、前田はすぐに手術室へ入れられた。見るからに栄養状態のよくなかった山崎もベッドへ寝かされ点滴を受けた、そうしていつのまに、眠りに落ちてしまっていた。

――どのくらい、眠っていたのだろうか。
目をさますと、既に窓の外は明るく…、ベッドの脇には永川だけがいた。
僅かに軋んだベッドの音に聡く気づいたらしい永川は、読んでいた本をパタリと閉じると、おもむろに口を開いた。

「起きたか。お師匠さんは峠越えたそうだ。もう大丈夫だって。命に別条ないって」
「そうか、良かったぁ…」

それを聞いて、まず山崎はひとつ息をついた。

「だが、右脚はダメだったんだ。膝下切断だって」
「そっか……」
「その様子だと、予想はしてた、…か」
「そら、まあ…。傷もだいぶん悪そうやったし…」
「だよな…」
「でも…、助かったんや…。良かった。本当に」

それは山崎の偽らざる本心だった。
道中何度、最悪の事態が頭をよぎったかわからない。何しろ、うたた寝から醒めるたび、慌てて呼吸の有無から確かめなければならなかったのだから。

「…そうだな。命があっただけ良かったと思わなけりゃならない。もう少し遅かったら、本当に危なかったってさ」
「せやろな…」
「助かった。ありがとう」

おもむろに居ずまいを直し、永川は深く頭を下げた。


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