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間もなく、商用の白いワゴン車が駅舎に荒く横付けされ、おとな数人の手によって前田は慌しく車両後部へと運び込まれた。
数歩の距離からそれを眺めて山崎は、ふっと脚の力が抜けるのを感じた。どうにかこうにかここまで来て、ようやく彼の痩せた背から荷が降ろされたのだから無理もない。
「カッちゃん!それからえーと、おまえも!早く来い!」
梵の、ドアから身を乗り出して手招きをする姿がやけに遠く霞んで見える…、
「お、っと…、」
「あっ、おい!」
不意に眩暈を起こして倒れかかった山崎を、横から永川が急いで腕を伸ばし支えた。
「歩けるか」
「…何でもない、ヘーキや」
「俺に掴まれ。さ、乗ろう」
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