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「大丈夫か?」
「…離せよ」

気遣う永川の手を荒く振りほどき、…謝罪の言葉こそ口にしなかったが、梵は視線を下へ逸らした。
山崎も追及をしなかった。今更、腹も立たなかったのだ。
もっとも、あの日を迎えるよりも以前の彼だったらば、到底これでは済まなかったことだろう。
しかし今となっては、人々のこうして痛々しく取り乱す姿を目の前で見せつけられることにも、とうに慣れてしまっていた…、

「…問答は後や。とにかく救急呼んでんか」
「いや。そんなもんはない」
「はあ!?」

…しかし、さすがの山崎も、この回答は全く予想だにしていなかった。

「いま知り合い呼んで車出してもらうから、」
「いや。待てやコラ。ないって何やねん。救急もないってどんな田舎や」
「ないものはない。とにかく、ここにはない」
「別に戦争してへんねやろ…、」


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