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ずん、と重く空気が震えた、次いで大地が震えた。
龍のごとく黒煙が上がる。

彼は吼えた。その細い身体から出たとは誰も到底思えない、獣のような声で吼えた。焦りと後悔と、現実を受け入れられないという気持ちがその身を激しく揺さぶった。

――ここからの記憶はとても曖昧で、数日あるいは1週間ほどの間に起こったことを、彼は正確に覚えていない。

人のものとも思えないような叫び声をあげながら猛然と着た道を走り、まさに燃え上がらんとする瓦礫の中へ分け入ろうとするところを数人がかりで取り押さえられたことも覚えていないし、
かと思えば急に魂が抜けたようになり、道端座り込んだまま動くことができず、担ぎ上げられて怪我人とともに広場へ運び出されたことも覚えていない。
翌日から死体安置所を何ヶ所もさまよい、どうにか弟と祖母、次いで父の亡骸と対面したあたりのことは辛うじて覚えている。
妹と母は終に見つからなかった。

そして…、いつのまにか、独りになった。


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