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「おわっ」

不意に、不随の足がもつれた。咄嗟に持ち直そうとする努力もむなしく、あの火星探知機似の無骨な義足がドアラの腹のベルト金具へピンポイントに引っかかり、前田は前のめりに転倒してしまった。
もちろん山崎は携帯電話なんか持っていない。最後のチャンスはドアラによって、実にあっさりと逃げていってしまったのだ。
しくじった。ドアラのせいとはいえ、これはしくじった…、ドアラのせいで……、この与太郎が…、

「ええい痛たたた、邪魔くさい!何を昼間っから転がって寝とるんなら、飼い主はまだ戻らんのか!」

この前田智徳ともあろうものがつまらぬ不覚をとった、という事への、おそらくは自分自身に対する少しの照れ隠しだろう。山崎をたしなめたばかりの口から、うっかり罵声が滑り出る。
すると…、驚くまいことか!たった今まで死んだように眠っていたはずのドアラが、突如、ユラリと立ち上がり、その巨大な頭をもって、前田の行く手を塞いでしまった!


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