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こんなことなら昨日のうちに話をつけておけば良かったが、それはもう後の祭りだ。昨日のうちはまだ心理的にも余裕があったから、この件に関し微妙な立場の山崎に対して、どこからどう話せば最善かなどと細々考え込んだものだった。
しかし、というか案の定、夜になっても未だ整理のつかない部分が残っていた。平常どおり眠くなってしまった前田は翌日に全てを延期し、21時には床に入ってさっさと寝てしまったのだ。
まだ翌一日があるから、その間に折を見て話して聞かせようと思っていたのだ。夜明けから日没まで、たっぷり時間はあるわけだから、この考えは特には悪くない。
だがタイミングの悪いことに、この直後に永川、森野が帰ってきて、山崎までも伴い、酒をあおっていたのだから、ここに前田さえ揃っていれば、絶好の機会になっただろう…、しかし前田は日常的に早寝であるから、これに関しては仕方ない。
そして今日、いつ戻るかわからない永川の要望に備え、山崎を確保しておくことに失敗した。頭を冷やしてくるなどと言われても、一体いつまで、どこをほっつき歩くつもりだかわからないのだから、待つ身にはたまったものではない。
焦れば焦るほど、これからせねばならなかった事柄が眼前に重く折り重なっていき、にわかに、視野を狭めていく。
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