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「そんなん思うてます、けど」
「…けど?なんじゃ」
「…同志、や、あれへん」
「……」
「…です」

また少し言葉に詰まり、山崎は、語尾を後から取って付けた。このたどたどしく抽象的な表現から何事かを推測することは何人にも難しく、そして危険な行為だ。
しかし前田はたったこれだけの欠片から、山崎が何を言わんとしているのかを推し当てた…、

「…長い時間を共にし、同じ飯を食うて、修業した。わしゃ、充分じゃと思うがの」

正確には、判ったつもりになってしまった。

「ここで生まれたかどうかっちゅうんは、些細な問題じゃけ。何も気にせんでええ」
「……」

前田の返答は山崎にとってまったく的外れとさえ言えるものだった。問題にしたいのはそんな事ではない。山崎はうつむき、暫く顔を上げなかった。
たったあれだけ言って、万事理解してもらおうなどと考えるほどに彼は子供ではない。あくまで理解を求めるのなら、さらにいくらかの、具体的な言葉を…、その乾いた喉から搾り出さなければならない。そのくらいのことは知っている。

だが一体、どこから話したらよいのだろう。長い時間を共有し、彼らは暗黙の暮らしに慣れすぎていた。仮に理路整然と説明できるとしても、おそらく伝わらないだろう。言われんでもわかった気になっている相手にその認識を改めてもらうのは、いかにも骨が折れそうな作業だ。
まして、いま必要差し迫られ、少ない語彙力をもってめちゃくちゃに何かを述べたところで、ほんの少しでも理解が得られるなどとは…、山崎には到底思えなかった。

「…いえ」


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