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――いずれ都市国家として認められる日が来たら、そのときは小野寺に総帥の椅子を譲りたい。

不意に、その言葉が帆足の脳裏に蘇った。

この交渉がつつがなく成立すれば、その日は遠からず来ることだろう。ついに大願が叶おうとしている。それは帆足にもよくわかっている、だがどうしても腑に落ちない。
…仮に小野寺に器量があったとしても、それでも、まだ経験は圧倒的に不足のはずだと帆足は考えていた。それでも、その日が来れば…、すぐにでも総帥の座を降りるというのか。なぜ。

真意などわからなくてもいいと今まで自分に言い聞かせてきた。すべては信あればこそ。
しかし。
しかし今度ばかりは…。

「…ぜひ、聞かせていただきましょう」

2メートルと離れていないところで発せられたはずの大沼のその声が、帆足には妙に遠く感じられた。

いや。気を確かに持て。
俺は…、
俺はただの剣だ。あの手に握られた一振りの剣に過ぎない。それ以上は望まない、言われたことをやるだけ。
疑問など…、持たなくていい。


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