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とかく、そうした理由が重なり、帆足は解放戦線内部で孤立した。
「…俺は、あんな風になりたい、だろうか」
岸は歩きながら、また独り事を言った。生まれ持ったか何かの超能力については今更ほとんどどうしようもないこととしても、
圧倒的な戦闘力、総帥からの絶対の信頼、それに最短距離で応える胆力。現在の幹部を見渡すに、これらをすべて満たした人物は帆足をおいて他にない。
しかし、これと、末端の兵士にまで敬遠されずに生きることは…、許の話からいえば相当に難しいと想像できる。
その二択の中から帆足は、多数の人間に嫌われ、かわりに誰にも意見されず、作戦を確実に自分の裁量で執り行う権利を手にした。
これは本当に二択なのだろうか、両立はできないのか。
一見、総帥はそれを両立しているように見える。実際に帆足を超える破壊力を持つのは解放戦線では大沼だけだが、その力は近頃では滅多に使われない。それをやむを得ない場合を除いて全力で使ってしまうとどうなるのかが、帆足の胴についた傷を見れば一目瞭然だからだろうか。
しかも、やはり大沼は総帥だ。人望があるとかないとかではない。この組織では、トップに立つ人間なのだ。帆足とは立場が違う。
口論して殴り合いができたとしても、その他のことに関して言えば…、岸本人と帆足とまでは言わないまでも、岸と許くらいの違いは歴然と存在しているのだろう。
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