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そういえば帆足本人も前日夜の質問に対し…、「それが俺達に対して最善と思ったから殺った」、とはっきり口にした。これらは矛盾なく一致する。
当時からの仲間はそれが何よりよくわかっていたから、先ほどの許がそうであったように、帆足に対しては寛大なのだろう。
だが、しだいに解放戦線に人が増え、誰が誰だかわからなくなり、組織の細分化が必要になってきたころから、帆足は他人を威嚇するようになった、という話だった。
それまでに見せていた顔は、決して柔和とまではいかないまでも…、先刻車の中で岸に見せた横顔のように、人間らしい顔つきだったのだろう。

しかし、許ほか古くからの仲間たちは、とりたてて帆足の名誉回復に努めようとはしない。先のように、聞かれれば応えるが、あくまでその程度だ。
その理由は簡単で、帆足の性格を考えれば…、彼が実は話せばいい奴などと宣伝して回ったら、それこそ横面を張られるくらいでは済まないかもしれないからだ。

帆足は、生い立ちに加えその後歩んできた人生のせいか、人に褒められることを快しと感じることができない。褒め言葉とはその実自分をバカにしているか、あるいは何らかの見返りの期待をもってだけ発せられるものだと固く信じてしまっている。
仮に帆足がそこらで嫌われているのを誰かが心苦しく思ったとしても、それを触れて回ったことでいちいちあの腕力で殴られたのではたまらない。


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