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☆ ☆ ☆
帆足とガイエルを後部座席に乗せ、岸の運転するBMWは…、顔合わせ時の物騒な挨拶とは裏腹に、ごく和やかな空気のまま旧官邸へと帰還した。
岸は運転席にいたので、後ろの会話にはあまり混ざらず、ただ内容を聞いていた。その限りではガイエルはとても感じのいい男だった、そして同時に岸は、帆足がごく人並みな世間話をする能力をもつことも知った。
つまり彼は、気を許せばそれなりに喋り、かつ初対面の相手との会話に応じることも問題なくできるのだ。
それなら…、普段、些細なことですぐに誰にでも牙を剥き、解放戦線内部では祟り神のように恐れられているあの帆足とは一体なんなのか。岸はますますわからなくなった。
ともかく、無事に客を連れてきたらまっすぐ応接室へお連れするように、とあらかじめ岸は大沼に言われていた。
その言いつけに従い、応接のドアを開いてまず客人、それから帆足を通すと…、中から大沼が出てきて彼らを迎え、それから岸に向かって言った。
「岸者ありがとう、ご苦労さん。戻って休んでいいよ」
「はい」
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