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「それでですね。この方面の戦線は、できるだけ押しておかねばならないということでしたので、無人戦闘機の追加を要請に参りました」
「そうだな。あの山本と互角に渡り合うのはきついが、この際防御は捨てて、無人機の制御モードを限界まで攻撃寄りにしておけば、いずれ量で押し返せるだろう。
今朝の緊急会議でも言ったとおり、戦線維持の重要性は増している。多少の犠牲を払っても、どうにか対抗しなければな」
未明の輸送車襲撃事件を受け、文京軍では夜明けを待たず緊急に会議が開かれた。文京軍の今後の作戦展開を左右しかねない事件だったからだ。
帆足に一刀両断されたのち輸送車とともに灰燼に帰した謎の積荷は…、他でもない、グライシンガーの強化パーツだったのである。
永い歴史の積み重ねの中では、時に、グライシンガーが聖都を護る以外の目的に使用されることも考え得る。
数千年の昔、今回のような事態がいずれ起こり得ることを予測した古代の科学者たちは、『グライシンガーが全力を出すためには補助装置を積載しなければならない』という二段構造を考え出した。
この補助装置は目的どおり、グライシンガー本体とは分けられ厳重に保管されていたが…、ラミレス将軍は立場を利用し、これもごく速やかに運び出した。
そして、聖都の追跡を逃れるために、本体に先んじてこのパーツだけを、夜中に川崎基地まで輸送する手はずだったのだ。
段取りは成功間近だった、しかし…、基地の直前で、それは破壊されてしまった。手口は嘲笑うように鮮やかだった。
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