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「いいか、名古屋東の空中戦線をできるだけ押しておきたいのは、今朝も皆の前で述べたが、グライシンガーをできるだけ速く、無傷で名古屋近くまで送り届けるためだ。
 グライシンガー自体は相当の装甲を誇るが、いちどきに駆動できる時間は半日程度だから、移動には輸送車両を使うことになる。この輸送車が爆撃を受けてしまうと、作戦の仕掛けが遅れることが考えられる。
 空からの攻撃だけでも、なるたけ防ぎたいんだ。なにせ、川崎基地までの道のりでさえも、安全でないことがわかっているわけだからな」
「また奇襲をかけてくるでしょうか。そうなればやはり、所沢は今回、明確に敵に回ったと」
「いや。それはひとつの可能性にすぎない。所沢の犯行に見せかけた横浜の謀略ということもありえるからな」
「横浜軍にあれが可能でしょうか」
「想像で言うなら、無理だろう。しかし不可能と確実に断定できるだけの材料があるかい?」

原の問いかけに対し清水は少し考え込むように黙り込み、それから返事をした。

「…ない、ですね」
「そうだろう。我々は横浜軍について常に情報を収集してはいるが、全容を知っているわけじゃないんだ。もしかしたら仁志が例のごとく無茶をして奇跡的にあれを成功させたのかもしれんしな」
「…」


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