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軍事とはあくまで、政治的手段のなかの一翼を担うにすぎない。都市の意志として古代の遺産を瓦礫に変えたいというのなら、軍人はそれに従うより他にない。
「とりあえず、私の話を聞いてくれないか」
「ああ、そうでした。失礼いたしました」
「グライシンガーについては、いずれ話せる時が来るかもしれない。それまで、胸にしまって置いてほしい。これから述べる内容も、同様だ」
大矢は部屋の照明スイッチに一番近く座っていた村田に室内の消灯を命じると、会議室の中央に置かれたプロジェクターに電源を入れた。
プロジェクターの真後ろに座っていた、海軍輸送部隊の大隊長を務める川村丈夫は、その排気に目が霞み、思わず隣の空席へ移る。
果たして・・・、ファンの回る音とともに、白幕にパッと写しだされたものは。
『入力信号がみつかりません』
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