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そこで大矢は言葉を切った。会議室はシンと静まり返っている。みな言葉を探しているのだ。
「…それは」
その空気を打ち破り、会議室の後ろのほうから、まず最初に声がした。
「こちらから奇襲をかけるということですかね」
声の主は三浦大輔。彼は何の変哲もない街角の花屋の息子として生まれ、若くして軍に志願し、ほぼ間を置かずに海軍に抜擢され、水兵の身から叩き上げでここまで出世してきた人物だ。
ロカビリーな髪型が独特の雰囲気を醸し出しているが、それ以外はいたって優秀な人物である。
とかく、この場では彼の発言が一瞬早かったというだけで、他の者も、まずそう思ったことだろう。せっかく回避できそうな戦争を、わざわざこちらから仕掛けるのか。
「そういうことになる」
大矢はこれに断言して答えた。
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