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「おい、これで終わりじゃねぇんだぞ。早くここから」

思ったが、ありがとうと帆足は言わなかった。頼んで救ってもらったわけではないとか、それは些細な問題だが…、この時ここで礼を言うのは何か違うような気がしたのだ。
まだ逃走は終わっていないから…、帆足自身はこのとき、この気持ちをそう理解した。

「わかって…、る…、」

大沼はやがて立ち上がると、帆足の後へついて歩き出した。

「あそこに車があるな」
「キーは…、」
「壊す」
「でも、エンジンが」
「それも壊す。キーの差込口を、ちょちょっと」
「……」

それがまるで常識のような手ぶり口ぶりで説明する帆足に対し、半歩遅れて歩く大沼は無言だった。問いただす気力がなかったのだろう。

「…で、免許は」
「ねぇーよ」
「だよな」

これももちろん、あると思って聞いていないことは明白だった。彼らが互いにまったく同い年と知るのは後日のことだが…、帆足と大沼は見るからに同年代。このとき弱冠16歳の大沼にも、帆足の年齢はおおよそ察しがついていたはずだ。

「運転したことは。あるんだろうな」
「そりゃあるさ」
「なら、いいけど…」


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