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――みずから巻き起こした地獄の業火と、そのただ中を自分を背に乗せ疾走した若き日の獅子、そして、幼いあの時に続いて再び死に損なって見上げた現世の夜空。
永く記憶の奥底へ押し込まれたまま埃をかぶっていたその物語を、帆足はこのとき妙に仔細に思い出し…、銀幕でも眺めたような気分になって、しばしそのまま無言になった。

「帆者、どうしましたか」
「ん、ああ…、」

ややしばらくして、岸の呼びかけによって現実へ引き戻され、ようやく、帆足は生返事をした。そして折角リアルに蘇った思い出を、ざっくりと纏めて口に出した。

「いや。色々思い出しちまってな…、とにかく、俺は死ぬはずだったんだ。それを沼が無茶して強引に生かした。だから俺は別にあいつを救っちゃいない、逆だ。不死鳥でもなんでもない」
「死ぬつもりで…、」

岸はその言葉を反復した。帆足はサラリと口にするが、それなりに衝撃を含んだフレーズであることには違いない。
しかし、岸はそのこと自体について是非の類を述べなかった。そのかわり、別の角度からの質問を投げた。

「では…、救われたと思いますか」
「さあな」


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