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会話が途切れると、辺りはシンと静まり返った。作業の現場からそれほど遠く離れてはいないはずだが、風に木々のざわめく静かな音の重なりが、彼らを外の世界から遮断しているのだ。
「…それとも、もしかして」
ややしばらくして、木村が口を開いた。
「岸っしゃんがそう言うってことは、何か」
「いや、全然、そういう訳じゃないすよ」
岸本はその質問を遮り、笑いながら軽く手のひらを振って否定する。
「なら、いいけど。脅かすなよな」
「すんません」
木村は苦笑し、また前方遠くへと視線を戻した。
岸本の言葉に対し、木村がこうも過敏になるのには理由がある。岸本は、永川や前田のようないわゆる能力者ではないが…、ひとつだけ、理屈では説明しにくい特技を持っているからだ。
それというのは、動物的予感力。よく、第六感とか虫の知らせとか呼ばれるもので、もちろん効力のほうも、世間で通用しているイメージを超えない、つまりさほど信用できるものではないが…、
彼の場合は、それによって命の危険を回避したようにも思える出来事が過去にあるため、そのエピソードが、仲間うちでの信憑性を少しばかり高めているのだ。
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