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横浜は海運国家であり、陸・空軍も保持しているものの、やはり特筆すべきは海軍だ。
総合力ではやはり文京に分があるものの、関東における湾内の覇権は横浜と、同盟関係にある対岸の幕張が握っていると言っていい。

「確かに、横浜が手出しをしようとするなら、輸送車両の動きを監視して水上から狙い撃てばそれで済むことだな。それがなぜあんな奥地で、しかも、積荷を回収したかったわけでもないんだろう。不可解だな」
「そう、目的がよくわからん。それにそもそも、横浜にあのテロを起こせるかどうか自体が怪しいような気もしてくる」
「それは…、技術的な話か」
「そうだ」

横浜は海軍力に定評がある反面、陸上戦がやや苦手というのは周知の事実だ。
彼らが得意とするのは軍艦の火力を最大限に生かした砲撃戦で、そのための人材には事欠かないが、今回のような細かい作戦はさほど得意ではない。

「仮に何らかのアクシデントでなく、初めからこの位置で作戦が組まれていたのなら…、これは相当の実力に裏打ちされた大胆な作戦だぞ。
 さっきも話したが、この位置では、ちょっともたつけばそれだけで川崎基地が異変に気づく。襲撃から撤収まで、余程迅速に動ける自信がないと」

くどいようだが、現場から川崎基地までは残り5分程度の道のりだ。輸送車両のそもそもの遅れも含めて、時間的猶予は30分以内だろう。それ以上の遅れは事故と判断されるはずだ。
その時間内に作戦実行し、姿を消すとなると…、仮に名古屋の特殊部隊に同様の作戦を命じたとき、確実にできるという自信は井端には持てなかった。横浜もおそらく似たようなものだ。

「しかし、この場所で今、文京軍の輸送車を破壊する行為は、明らかに横浜の宣戦布告ではないのか」
「願望としてはそうであってほしいし…、実際、横浜は何らかの形で関わっているだろう。しかし実行犯は横浜ではない可能性がある」

井端は天井を見上げた。並の軍隊にはできないかもしれない特殊作戦を無難にこなすだけの実力を持つ組織となれば、少なくとも関東では、思いつく名は限られる。

「……所沢」
「そういうことだ。もっとも仮にそうだとして、所沢がわざわざ関与してくる理由はわからんが…」
「何か密約があるかもしれん。金銭、あるいは後の軍事協力か」
「あり得るな」


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