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どう思うか…、と言われても、荒木には何を答えればいいのかすらわからない。再び視線を泳がせる荒木を見かねた李が助言する。
「そんなに考え込まなくてもいい。我々の中にもまだ正解は存在していないんだ、気が付いたことがあれば教えてくれ」
「気が付いたこと…、」
荒木はまた考え込んだ。考え込まなくていいと言われてそれができる位なら、今頃とっくにそうなっていることだろう。
彼はたったひとことの助言で自分を変えられるような天才ではない。しかし同時に、助言を貰ってなおかつ何も口にできないほどに愚鈍という訳でもなかった…、やがて口を開き、荒木はたどたどしく発言した。
「この件は、やはり、横浜の仕業なのでしょうか」
「だから、今は現場の位置を…」
「…いや、待て」
荒木の発言が終わるなり井端は口を挟もうとしたが、それをさらに李が制する。
「案外、そっちが先かも知れんぞ」
「…、どういうことだ?説明してくれ」
「昨今の情勢と、多摩川流域という位置を考えれば、横浜軍がこの事件を引き起こした可能性が高い。
我々も暗黙のうちにまずそう考えていた。違うか」
「そうだな、異論ない」
「しかしだ、輸送車両が文京の中央基地から出たのか、それとも湾岸地区の倉庫群のどこかから出たのかはわからんが…、」
李は一旦言葉を切り、再び扇子で写真上の河口付近を指した。
「仮に横浜なら、この辺りでやれるはずだ」
「うーむ…」
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