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☆ ☆ ☆

夜半、所沢解放戦線アジトにて、総帥こと大沼幸二は小箱と水の入った手桶を抱え、腕に手拭いを提げて、大股に廊下を歩いていた。

このアジトは元々、旧所沢政府の官邸だった建物で、長く独裁をしていた政府の要人が暮らしていたわけだから、当然、造りは頑丈、かつ随所に贅の尽くされた代物だが…、
今となっては手入れをする者もないため、繊細な装飾は見るも無残に荒れてしまい、替わって要塞と見まがうほどの武装が随所に設えられている。
やがて廊下の突き当たりにある大きな扉の前へ立つと大沼は、前に立つ見張りの青年を軽く笑顔で制したのち、ノックもせずに、ドアノブを回した。

「おいこらッ、誰も入れるなつってんだろ!!」

ノブの回るガチャリという音と同時に、ヒステリックな怒鳴り声が夜中の空気を引き裂く。

「でかい声出すな。みんな寝てる」

立てた人差し指を唇にあて、ドアの陰から顔を出し、大沼は悪戯っぽく笑った。その顔を見て帆足はひとつ溜息をつく。

「なんだ沼かよ。報告なら、力者と岸者が行っただろうが」
「うん、聞いた」
「じゃあ何の用だ」

読んでいた本をベッドの上へ投げ出し、帆足は睨むような目で大沼を見た。しかし大沼にとっては慣れたもの、そんな目つきくらいでは威嚇されたうちに入らない。

「ん、また傷をこさえてきただろう。ちゃんと処置はしたのか」


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