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「…確かに、鍵は無理だな。仕方がない、箱に穴をあける」
「え?」
「破片が飛ぶかもしれないから、離れてろ」
何を言っているのか、岸には理解できなかったが…、とにかく離れていろと言われたので、急ぎ、後ろへ数歩下がった。
帆足は剣を鞘へ収め、左手をみつめて数回握ったり開いたりして、やがて一人うなずくと…、
突如、キィィィィンという耳鳴りに似た音が辺りに鳴り響いた。実際、岸はそれが自分の耳鳴りかと思ったほどだ、しかし、徐々に大きくなるその音は、帆足の手のひらから発せられているということがすぐにわかった。
そして音が大きくなるにつれ、帆足を中心にして強い風が巻き始めた…、すぐにその風は暴風となり、岸は飛ばされそうになって、さらに後ろへと下がった。
帆足の手のひらから青白い光が稲妻のように空気中へと走り、そのたびにバチバチという放電の音がする、その手のひらをおもむろにぐっと握ると、帆足はいきなり輸送車のコンテナを殴りつけた…!
竜巻が家屋に直撃したかのような強烈な破壊音と共に、突風が巻き起こる。目も開けていられない。
5メートルほど後ろへ離れていた岸はなんとか耐えたが…、じきに風がおさまり、見ると、帆足本人が吹き飛んで、路上へ投げ出されている。
「だ、大丈夫ですか」
「痛ててて…」
脚を斬られても痛いと言わなかった帆足が腰をさすりながら起き上がる様子に、岸は手を貸しながら思わず笑ってしまいそうになった。
しかし、実際そんなことをしては何をされるかわからないので、どうにか、努力して表情を保った。
「ちょっと、見てこい」
言われて見ると…、そこには信じられない光景があった。コンテナの背面の左半分が、X字型に裂けている。
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