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倉の説明は森野の疑問とは微妙にポイントがずれていたが…、はからずもその答えはまさに、森野の求めていたものだった。
おそらくこの質問はこれまでに何度も何度も受けてきているのだろう。無駄のない説明だ。

「…成程」
「さ、こんな薄暗いところで立ち話もなんですから。お上がり下さい」

そう言って倉が振り向いたその向こうに…、いつの間にか、開かれた襖から半身を乗り出し、倉の背中ごしにこちらを窺っている影がある。
何かと思って森野は目を凝らしたが…、室内から漏れる光を背中に受けているため、その正確な姿は判然としない。

「起きていたのか」

倉が声をかけるが、影は返事をせず、微動だにしないまま、ジトリとこちらを見つめている。…嫌な緊張感を伴った空気が場を支配する。

「…まあ、気にしないでやって下さい。ささ、どうぞ中へ」

再び森野に顔を向け、倉は少し困ったような笑顔を見せてから、影の張り付いた襖を通り、奥の部屋へと歩き出した。永川がそれに続く。
そのさらに後ろ、やや遅れて森野が続いた。これを気にしないでおくのは無理だが、それでも、できるだけ見ないようにすることはできるだろう。
触らぬ神に祟りなし。見ないように、目を合わせないように努めつつ、やや引きつった面持ちで、森野がその開いた襖、影の真横を通り抜けようとしたそのとき…、

「おい、おまえさ」

突然、影が、声を発した。


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