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井端はソファに身を沈めたまま、ぶつぶつ独り言を言っている。
少しは建設的に頭を使え、君の仕事だろう…、と言いかけて、李はその言葉を飲み込んだ。井端は見るからに疲弊している、厳しく叱咤するのは得策でないと考えたのだ。

「…話を整理しよう。まず、誰かが長官に告げ口をしているとしたら、現状は…、
 森野が失踪していることはバレている。それを君が隠していることもバレている。そして、広島というのは君の推測にすぎない」
「…そうだな」
「次に、本当に広島から噂が聞こえてきているとしたら、どうだ」
「…森野が失踪していることを掴まれているかどうかはわからない。隠し事をしている、ことになるかどうかも、それに拠る」
「そうだ。そして、広島には噂の火の元がある」
「火の元…」

火とは森野か、あるいはそうでないものだ。森野である可能性がある、その程度のものだが、今のところ唯一、可能性と呼べる手掛かりだ。

「さらに言えば、告げ口をされたとして、それを長官が鵜呑みにするとは限らない。
 そして、もしも何も掴まれていないのなら、まだ時間があるんじゃないのか」
「しかし、その確率は…」
「確率の話をするなら、君が尽力しても徒労に終わる確率が高い、つまり高確率で森野は復帰できない。ならば黙って見過ごすのか、その程度か」
「…賭けろっていうのか」

ソファから机ごしの李を、傍目から見れば睨みあげるように見上げ、井端は言った。それを聞いた李が、フンと鼻を鳴らす。


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