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「心配しなくても、そんな言うほど変わらんよ」
「はあ?何言うとんねん、おらんよーになるからって何やその言い草、黒田にケチつけたら許さんで」

永川の言い捨てるようなセリフに、山崎が口から米粒を飛ばす勢いでつっかかる。

「黒田が大したことないって言ってんじゃない、落ち着け、そんなわけないだろ。ただ、3位に入らないなら同じだってことだ。
 今年惜しかったってんならともかく、別に黒田のせいじゃないけど…、黒田がいても駆け込み5位だったんだから、いなくなってもこれ以上どうもならんって」
「同じってことあるかい、ビリケツは嫌やんか、5位ならまだネタになるわ」
「ネタはもう腹一杯だね。優勝争いできないなら俺はどっちでもいいよ、熾烈な5位争いとかもう飽きた。そんなんで熱くなれないんだよ」
「…こら、お前ら騒いどるけぇ、いま黒田が喋ったん何も聞こえんかったじゃろが」
「すんません」
「…しっかし、昔は強かったもんじゃがのぉ…、大体お前ら球場へも行かんで、文句ばかり言うでないわ、足があるんじゃけ応援に行きんさい」
「行っても負けるじゃないですか」
「せやせや」

名古屋にもプロ球団があり、森野も同僚と時折試合を観ることがあるが…、名古屋の球団はおおむね常勝であるため、こんな会話はしたことがない。
しかるに、ここではファンの発想からしてこの有様、あまりの暗黒ぶりに森野は目をぱちくりする。

「…そうじゃ名古屋さん、すまんすまん、それで」

はっと思い出したように前田が森野のほうを向き直り、折れてしまった話の腰を修復しようとした。

「ええと、特に鶏がなつきやすいとは感じませんでした、このように」

森野は左手で前髪を上げて見せた。そこには鶏に蹴られてできた裂傷が刻まれている。


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