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☆ ☆ ☆
「いただきます」
ようやくすべての支度が済み、全員が食卓へ顔を揃える頃には、つけっ放しのテレビが7時のニュースを読み始めていた。
「珍しいメニューじゃの」
「今日はナーが作りましたんで」
「急ぎましたから少々雑ですが…」
「かまわん、普段もそんな丁寧なメシ食わされとらんわ」
そう言われて山崎が何か言い返すかと森野は思ったが、言われた本人は余程空腹だったのだろう、早くも食事に夢中で、前田の悪態など耳に入っていないようだった。
「しかし永川、お前はすごいよ、どうやったらこの短時間でこれだけのメシを作れるのか俺にはわからん…」
「どうやったらって、毎日やってるからに決まってるだろ」
「それにしてもだよ。この煮物なんか、すごくうまい」
「既製品だ」
「…そうか」
無言になった食卓に、ニュースの声が淡々と響く。
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