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☆ ☆ ☆

それから十数分ののち、森野が風呂から上がると…、辺りには食欲をそそる香りが充満していた。

「お、上がったところか、ちょうどよかった、ほれ」

暖簾をくぐって、永川が脱衣所へ顔を出し、バスタオルを森野へ向かって投げた。
着替えを用意しておこうと思い立ったところまでは良かったが、山崎はバスタオルにまでは気が回らなかったのであろう。
今しがたそれに気づいた永川が二階からタオルを二枚持ってきたところへ…、ちょうど森野たちが上がってきたのだ。

「おお、すまないな」
「そこの着替えはドアラの分だ。悪いがあんたは着てきた服に着替えてくれ」
「いや、ほんとに、構わなくていい、なんだったらこいつも別に」
「そうじゃない、まだやることがあるって言っただろ」

永川の言葉に、森野は怪訝な表情をして、二、三度まばたきをした。

「え、あれってメシの支度のことじゃなかったのか」
「違う。そう、メシもなるべく早く食えよ、…といっても、お師匠さんがダラダラ食い終わるまでは食卓を立つわけにいかないが…、そのあと、ちょっと出かけるからな」
「出かけるのか?この時間から?」

前日のこのくらいの時間、すでに街が静まっていたのを森野は見ている。今から行けるような場所がどこにあるのか、疑問に思うのも無理はない。


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