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「あ…、せやった。名古屋さん、お師匠さんに絞られて、腹すかしとるやろな、急がな。あー、でも…、寄りたいとこあるんや」
「どこだよ」
「お師匠さんに膝かけ買うたるねん、寒い言うてストーブひっついてはったやろ」
「今度にしろよ、急がないだろ」
「そんなわけにいくかい。これ僕の初めて稼いだ金なんやから!カンドーが冷めへんうちに、プレゼントせなあかんの」
「じゃあ、好きにしろ、ただもう日が暮れるから、ほんとに気をつけろよ」
「わかっとるて。ほな、お世話さまでした、勇人さんほんま、おーきに、ナーもなるべく早う帰って、飯の支度手伝うてや」

再度礼を言って頭を下げると、茶封筒を懐へしまい込み、山崎はドタバタと事務所を出ていった。

「…いい子だね」

その後姿の消えた玄関を見つめながら、青木がぽつりと言う。

「…まあ、そうね、気立てはいいよ」

少し間をおいて、永川もそれに答える。

「なんていうか。あんなに喜んでもらったら、金としても本望だろうね」
「なんだ突然、そんなこと」

まじめな顔で突然詩的なことを言い出す青木が可笑しくて、永川は思わず噴き出した。

「笑うなよ」
「いや、笑うよ」
「だって、争いの元になるばっかりじゃん、いつも、いつも」
「まあ…、そうだな」


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