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その言葉に永川はハッとして山崎のほうを向き、それからニッと笑って、頭を掻いた。

「ああ、ごめん。別にケンカしてるわけじゃない。勇人さんには色々我侭言いやすいからさ、つい」
「そ、お互い言いたいこと言ってるだけだから気にしないで…、まあ、初めて見たら、争ってるように聞こえるかもね。悪かった」

聞こえるかもね、やなくて、争ってるようにしか聞こえへんて…、そう山崎は思ったが、本人たちがいいと言うなら殊更こだわることもない。
恐らく、いつもこの調子で、長いことうまくやってきているのだろうから。

「で?もしかして、まだ付き合いあんのかい、あっちのほうとは」
「あるわけないだろ。あっちはノコノコ外を歩ける身分じゃない」

鼻で小さく笑いながらそう言って頭を横にゆっくりと振る青木を見て、永川は、そりゃそうだ、と言って笑った。

「たまにテレビに映る奴は、まあ元気なのかなって思うけど、それ以外は全然」
「映る奴は決まってるしな。名前忘れたけど、あのトップの奴」
「いや、あれトップじゃないんだよ」
「あ、違うのか」
「あれはメディア露出用の、なんちゅうの、報道官」
「じゃ、トップは別にいるわけか。知らんかった」
「うん。別にいるね。メディアに出ないから、地元以外ではほとんど知られてないだけで、地元じゃ有名だし、顔も知られてるんだけどね」
「…何々?だれか有名人の友達おんの?」

無事口論は収まったものの今度は言っていることがほとんど理解できないので、話に割り込む隙を伺っていた山崎は、ここぞとばかりに疑問をぶつけた。


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