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こういう時に遠慮しないのが彼のいいところであり、時には悪いところでもあるが…、青木は特に気にする素振りを見せない。特に隠し立てするような事でもないのだろう、答えは青木本人ではなく永川の口から発せられた。それというのは…、
「この人ね、テロリストなんだよ。所沢のね」
「は!?」
「都市間指名手配で懸賞つきの大物だぜ」
関係ないはずの永川がなぜか誇らしげに語るその内容があまりに非日常的すぎて、山崎は理解するのに数秒を要した。
「テロリスト…!?」
「昔の話だよ」
目をまるくする山崎に対し、青木は落ち着いた様子でコーヒーをすすり、微笑みながらそう言った。しかし、元テロリストなどと聞かされて、なんだ昔の話ですか、とすんなり納得する山崎ではない。
「昔の話言うたかて。所沢のテロリスト言うたら、有名やんか!?」
「…まあ、そうね」
青木は否定しなかった。それも当然といえば、そうかもしれない。なにしろ、所沢のテロリストといったら、有名どころの騒ぎではない。
所沢解放戦線青の獅子、通称『俺達』。世事には随分と疎い山崎でもその名は知っている。なぜなら、所沢から遥か遠く離れた広島でも、彼らの活動の様子は時折テレビや新聞紙上を賑わすことがあるからだ。
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