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「なんや僕自身、ヘタレやなと思うんやけど、あんな怪我しとって、しかも二本の足で立って歩いとるもんを目の前で死なすのは、
ちょっと…ショックやったみたいなんよ。ナーは、そういうのって」
「ああ、そういうこと…、そうだな…、」
永川は言葉を切ってあごひげを撫で、少しの間、思案した。その手をじっと見つめて山崎は、その先に続く言葉を待つ。
「あいつを殺さなきゃ、次の犠牲が出るかもしれない。…それじゃ、答えにならないか?」
「わかるけど、気にならんの…?」
「気にならないかって…、うん…、ならないね」
その、予想を超えた回答に、山崎は思わずピクリと眉を上げた。
気にならないはずはないけれど仕方がない、というのが山崎の予想した、つまりここで一番聞きたい回答だったのだ。しかし永川は実にあっさりと、気にならないと言い切った。
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