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「あ、本当。でも肉はあぶないかもね」
「うん、調べてみないとわからんね。せっかく若い個体だから、卸せるといいけどね。
さて、人員をいくらかと、迎えの車を寄越すように言っておいたんだけど…、ああ来た来た、銃と、ほら君も、サンダル拾っておいで」
「あ、は、はい」
事務的な冷たい会話が交わされていたかと思えば急に話を振られ、山崎は思わずビクリとした。
そして促されるままにその場を離れ、先刻脱ぎ捨てたビーチサンダルを拾い上げると、それからひとつ溜息をついた。
後悔と少しの恐怖がないまぜになったような薄気味の悪さが、頭蓋の中、蛇のうねるように湧き起こる。
いくらなんでもあれは非常識だ。自分が殺したにも関わらず、その死骸を足蹴にするなんて、一体どういう神経なのだろう。
寺で随分長いこと修業したとか言っているくせに、奪った生命に対する敬意が全く払われていない。これも慣れのせいなのか。惰性がそうさせるのか、
あるいは持った力が圧倒的すぎるために、スラィリーの一頭など、それこそ門前の落ち葉のようにしか見えていないということなのだろうか…?
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