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向かってくる怪物から目を逸らさないまま、永川は疾走する。見る間に距離が縮まる、視界が青色の巨体で埋まる、永川の頭をしばき倒そうとスラィリーが腕を振り上げる…、
力任せに振り下ろされる腕をかい潜って、永川はスラィリーの腹に左肩を当てるようにしてその巨体の前へ潜り込んだ。そして間を置かずズボンのポケットから出した右手を高く上へと伸ばし、怪物の顎の下へと突きつけた。
右手の二本の指には数枚の護符が挟まれている。その護符が直に触れた瞬間、強力な電流が走ったかのように一度ビクリと身体を大きく痙攣させ…、スラィリーは、どうしたことか、その動きを一切、止めてしまった。

「オ、マエアラ、シマクリ、ボンクラブリクロ…」

右腕を大きく上げた姿勢のまま永川は真上を睨むように見上げ、短く何事かを詠唱する。そして。

「破ァーッ!!!!!」

気合一閃、護符から青白い炎のようなものが渦巻くように立ち昇り、たちまちのうちにスラィリーの頭を包んだ。
それを真下から見届けると永川は突然肩をすくめ、スラィリーの側から逃げるようにして小走りに離れた…、
その直後、スラィリーはくずおれるようにその場へ膝をつき、そのまま前へ倒れた、
そして、それきり…、ぴくりとも動かなくなってしまったのだった。


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