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「ナー!!」

全身、顔まで土だらけになりながら、地に両手をついてどうにか這うように上体を起こし、山崎は喉も弾け飛ばんばかりにその名を呼んだ。

今は十数メートル先に遠ざかった怪物の姿が、爆風に舞い上がった土煙の向こうに見える。
大の男をひとり吹き飛ばすような爆風をまともに受けてもなお、スラィリーは少しよろめいた程度で、倒れることなく、その場に立っているのだ。
おそらく、弾が命中していれば、スラィリーの足に食い込んだ銃弾が内部で爆発を起こし、脚の一本を吹き飛ばすことができただろう。
しかし…、さすがはスラィリーの皮、聞きしに勝る防護力だ。永川の力をもってしても、直撃させなければ、傷さえ負わすことができないなんて!

スラィリーはその場でブルブルッと身震いし、爆発によって被った土を払い落とすと、前方に立つ永川をキッを睨むように見つめた。
一体どうするつもりなのか。広島ではスラィリー猟の季節には銃の所持および使用が認められているが、その種類には制限があり、特に連射のきく銃は取締りの対象となる。永川のライフルも例外ではない。
つまり、どうにかしてこの状況で次の弾を装填しない限り、銃はもう使えないということだ。
しかし永川は手を動かすでもなく、さりとて逃げるでもない。スラィリーはタテガミを逆立て怒りをあらわにし、それまで追っていた山崎には目もくれず…、永川目掛け、猛然と突進した!

「うわ、」

山崎は思わず口から声を漏らし、目を逸らしてしまいそうになった、しかし次の瞬間には吸い寄せられるように顔を正面に戻していた…、
なぜなら、永川が突然、構えていたライフルを地面に捨て、向かってくる怪物に向かって、真正面から突撃する姿が視界に捉えられたのだ!!


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