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危ない、という永川の言葉に、山崎はチラと背後を振り返った。果たしてスラィリーは最初よりも遥かに近くへ迫っており、腕を振り回せばこの頭にも手が届こうかという勢いだ。
最早予定の位置には誘導できまい、永川もそう考えて姿を現したのだろう。その機転に頼るしかない。
銃を構えているということは…、自分の跳んだ足の下を通して後ろの怪物の足を撃つということか。山崎は瞬時に永川の意図をそう理解した。
だが、この状況ではきっと期待されているほどは高く跳べない、本当に自分をよけて見事後ろのスラィリーを撃ってくれるのか…、
永川は道場において師に教わった武芸をなんでも器用にこなし、特に弓には秀でていたが…、しかし…、射撃が上手いとは聞いたことがない。
それなのに…、撃つのか、まさか正面から、棒立ちしたままで!

あかん絶対無理や…、と山崎は思った。成功する気がしない。しかし…、このままでは追いつかれる。

「早く!跳べーっ!!」

何度目かのその絶叫に弾かれるようにして、山崎が跳んだ。前方へ。
すでに随分息切れしており、しかも足場が悪く、踏み切りはまったく充分でない。高さは自分の背ほどもなく…、水平距離はおそらく数メートル。
それとほぼ同時に…、銃声独特の乾いた音を轟かせ、永川のライフルが、火を噴いた。


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