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井端はまたこめかみを押さえた。文京にとっては、ここ、名古屋東基地の占領は悲願であろう。
ここさえ押さえれば名古屋の市街は落ちたも同然、その勢いを駆って先にある西宮を蹴散らすことも容易だ。
そうなれば、後はまともな軍事力をもつ都市は、このあたりには直接影響してこない札幌福岡、それに海軍最強と言われる幕張くらいしかない。
名古屋・西宮を吸収したのちの力をもってすれば、数年のうちに各個たやすく撃破できることだろう…。
「…まあ、そう塞ぎこむんじゃない。要は、森野の命令違反を悟らせないように西から人を借りられればいいんだろう」
「…しかし、そんなことが…」
「不可能ではない」
「なにか、考えが」
「実際に姿が消えているわけだから、ただ隠し通そうとすれば、もちろん難しい。だから芝居を打つことになるが…、最悪の場合、君が犠牲になる可能性がある」
その言葉に井端は一瞬、虚を突かれたような表情をしたが、すぐにまたいつもの顔に戻り、先を促した。
「…聞かせてくれ。是非」
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