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「西宮が文京と何らかの約定を取り交わしている可能性は高いと思うが…、共同戦線を張って名古屋を落とすつもりとは考えにくいな。
名古屋が落ちたら、その後は文京と直接、1対1で対峙する羽目になるだけだ。そうすれば文京が有利なのはわかりきっているからな」
ひととおりのセオリーを喋る李に対し、ふむ…、と井端はうなずいた。確かに、西宮にとって名古屋侵攻にはメリットがない。
過去にも、支配地域の境をめぐって紛争に発展したことは何度もあるが、市街地に侵攻してくるような真似はされたことがない、が…、
いくつか気になることもある。
「西宮のやることだから、わからん部分もあるぞ…。あそこの司令官は変わっているし…、
市長は過去にはひどい体たらくだった西宮軍を現在の位置まで育てた辣腕だ、なにか考えがあるかもしれない」
「もちろん、可能性としては考慮すべきだ。しかし確率は低い。つまり私としては…、森野云々の話を置いて、という前提で話をするのなら、
西から人員を回してもらうことには賛成だ。西宮よりも、今は文京を第一に考えて行動すべきだ」
「文京は現在、隣接している聖都神宮方面にも戦闘を仕掛けているようだが…、これはどう見る」
「報告によれば小規模だ。大した戦力を割いてはいないだろう。我々を油断させるためかもしれないし、なにか他の目的があるかもしれないが、
文京にとっては軍事的にも脅威となる存在ではないし、なにより、聖都を攻撃して占領するとなればいろいろと批判もあって厄介だしな…。
西宮とどういう約定を取り付けているかはわからないが、やはりこれだけ攻撃を本格化させてきている以上、名古屋を落とすつもりと考えるべきだ。
最低でも、今回でここの防衛ラインを突破して、この基地を占領するための基点にしたいくらいのことは考えているだろう」
「ふーむ…」
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