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そして名古屋東基地、会議室。
荒木の祈りもむなしく、ついには立ち歩く者も出て、最早会議はその体を成していなかった。かつてない荒れ様を目の当たりにして呆然とする荒木を気の毒に思ったのか、中村がそっと声をかける。
「あの中佐はん、確かに、相当デキルけどな…、指揮官が若いと、こうどーしょーもない時はいかんせん、こういう事になりがちやな…。
 立浪はんのほうが断然キャリア長いうえに口のききかたもキツイさかい、どーしても影響力がデカくなるんや」
ややファットな風貌に似合わず、中村の分析は冷静だ。傭兵としていくつもの組織を覗いてきただけのことはある。
「しっかし、それにしても、立浪はん、ほんまにヤバイと思うてはるんやろね。
 そやなかったら、あんな言い方せぇへんやろ。ワイよう知らんけど、頭のええ人なんやろ?」
「…そうですね」
「あんなん言わはったら、中佐はんの考えにカンケーなく立浪はんの意見通ってまうで。マズイやろ」
「ど、どうしたら」
「うーん…、まあ、ワイは雇われの身やさかいな…」
中村は申し訳ないという顔をしつつ言葉を濁した。確かに、会議に出席はさせられているものの、彼は正規の名古屋軍ではない。
荒木は肩を落としつつ、しかし中村にそれ以上の回答を求めることは筋違いだと理解した。
どうしたらいいのか。井端、ひいては森野を助けたいのなら、それは自分で考えなければならないことだ。
しかし…、気ばかりがどうにも焦ってしまって、一体何から考えたらいいのだろう、それすら荒木には考えつかないのだった。


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