075
「見とったか、ナー」
再び山崎と森野が対峙する。それを見て、前田は永川に耳打ちした。
「…見ましたよ。俺なら避けられなかったかも」
「避けられんじゃろうが、お前ならあの程度、当たる前に見切って弾けるじゃろ。あいつめ。気の使い手でないと思うて油断しおったな」
先刻までとはうって変わって手厳しい前田の言葉に、永川は苦笑するしかなかった。
身のこなしということにかけて山崎が天才であることは永川もよく理解しているが、現在のレベルではただそれだけの存在だ。
天賦の才を持つだけに、厳しく鍛えられていないのがつくづく惜しい、と永川はもう何度目になるかわからないが、また今回もそう思った。
「まあ、浩司のことはええ。本題は名古屋さんじゃの。ワシの思ったとおりじゃ、やはり素質はある」
「希代のドアラマスターというからてっきり、戦闘に向かない気質かと思ってましたが…」
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