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同時に、森野も戦略の立て直しを迫られていた。剣の試合と同様に考えていてはダメだ。ある程度予想はしていたが、それ以上に相手は身のこなしが軽い。
まして、攻撃しようと間合いを詰めればそれに応じて反撃してくる。隙をつくことにかけてはおそらく、向こうのほうが数段上手。
こいつを近寄らせずに機をうかがうには…、とにかく手数を増やすしかない!

森野は布団たたきをフェンシングのように構え、また一気に山崎との間合いを詰めた。どこから攻撃してくるかわからないから、胴体ごと突っ込むのは危険だ。布団たたきの先が届くだけの距離を測らねばならない。
山崎はその突きをヒラリと横へかわす。森野がすぐに方向を修正して間を詰める。山崎も間合いを計っているから、距離はぎりぎりだ。細かい動きで布団たたきが右へ左へ、山崎の鼻先を狙い、ときに前髪を掠める。

「おお、序盤から案外激しい動きが」
「勘がええちゅうか、頭がええの。浩司みたいな予測のつかん動きのできる相手には、無理に仕掛けんでとりあえず距離取っとくのが賢明じゃけ」
「とすると、やまちゃんからしたら、最初の立ち合いでバック転を見せたのがアダになりますか」
「あれは、ああするより他になかったじゃろ。いや、やりようはあったかもしれんが、どっちにしろ、大技にはなる」
「う〜ん、確かに…」
「時間は」
「3分半を経過です」


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