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そういえば…、と森野はふと思い出した。ダイニングへ移動するさい、前田は山崎の肩を借りていた、そんなに長い距離の移動ではないが、自力では歩行が困難なのだろうか。
しかし今時もっと性能のいい義足はある…、それに杖をつくなり、何なり、色々方法はあるはず。仮に片足を腿からすべて失ったとしても、それが最近の話でもないのだろうから、人手を借りなければ歩けないのは不自然な気がする。
「なあ、永川」
「ナーでいいよ」
声をひそめて、森野は永川を呼んだ。その意図を聡く読み取り、永川は隣に顔を向けず、肘をついたまま返事をした。
「ああ、うん、ひとつ聞きたいことがあるんだが」
「ん」
「お師匠様の、脚は?」
「あれね。昔、負け戦があってね。まあそれ自体はね、戦争だから、珍しいことじゃないんだけど、お師匠さんたらそのときは、
 傭兵のくせに随分味方に肩入れしちゃったらしくてね。怪我を押してしばらく駆けずりまわってたらしいんだけど。
 広島に帰ってきたときにはもうだいぶ傷が腐っててね。切断するしかなかったんだ。もう少し遅かったら命に関わってたって医者に怒られて」
「切断…」
「膝から下がないんだ」
「それで…、ご自身では、歩けないのか」
「そんな事はない」
相変わらず森野のほうを見ないまま、小声で、しかしはっきりと永川は断言した。


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