054

同刻、名古屋―――。
東方面防衛ラインにおける現場指揮官であり最高責任者・井端中佐のもとに荒木大尉から届いた一報は、事実ならば戦線を揺るがしかねない、とても重大なものだった。

「姿が見えないだと。ちゃんと探したのか」
「探しましたよ!探しもしないでこんなこと、いちいちあんたに報告に来るわけないじゃないですか!」
「お前ならやりかねんと思ったんだよ、ツバを飛ばすんじゃない!」
デスクごしに両手をついて身を乗り出してくる面長の部下に対し、井端はとっさに、それまで読んでいた新聞で顔を隠した。
「あいつのことだから会議の予定を忘れてるとか、昼寝してるとか、なんとか、色々考えられるだろ、とにかくもう一度よく探せ」
「それは今やらせてます、でも早めに報告をと思って、とりあえずお聞かせしたんですよ!」
「なんだ、それじゃまだ、ちゃんと探してないんじゃないかよ」
「それは…、そうとも言いますけど…、」
前後の矛盾を指摘され急に歯切れの悪くなった荒木の言葉を聞き流しながら、しかし井端には、その報告が、あながち間違いでもないかもしれないと思わざるを得ない心当たりがあった。できればコイツのいつもの早合点であってくれ…、と井端は内心、願っていたが…。


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