053

あれは何だ…、その反射光の出所を見るともなしに一瞥し、森野は一瞬にして、それが何であるかを理解した。
――義足だ。
本来ならば右足が畳を踏みしめているであろうその場所に、金属製の紛い物であることを包みも隠しもしない、まるで試作品のロボットのような、剥き出しの細い骨組みが見えている。
…かつて戦場から戦場を渡り歩き、伝説と謳われた前田が、ある時期を境に突然武器を捨て、それきり故郷から出てこなくなったというその理由を、森野はかねてから色々と想像していた。
必要な金が手に入ったからか。戦うことに疲れたのか。なにか思うところがあったのか…、いずれ自分もその境地に達し、迷うことになるのかと。
しかし、あるいは、これだったのかもしれない。
伝説となった傭兵は、決して納得した形で戦場を去ったのではなかったのかもしれない。もしかすると、志半ばで。
思いの強さに関わらず、人生とは時に目標を達成しないこともある。その事実を改めて突きつけられたような気がして、森野は心中穏やかでいられなかった。


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