029

玄関で履物を揃えていると、ほどなくまたバタバタと足音がして、山崎が奥から姿を現す。
「ナー、お師匠さん会うてくれるて。奥の座敷におる。行こ」
そう言って山崎の指差す先には閉じた襖が見えている。あの向こうに憧れの前田智徳がいる、そう思った途端にさっきまでの消沈ぶりはどこへやら、森野ははやる気を抑えられず深呼吸を繰り返しながら山崎の後ろをついて行った。
さほど長くもない廊下を進み、襖の前まで着くと山崎は、さっきまでのドタバタと足音を立てて廊下を走っていた姿からは想像のつかないような無駄のない所作で、ス、としゃがみ、戸口を軽く二度叩いた。
その動作を見て森野は感心した、あんな風に見えてもやはり教育はできているのだ、師匠に口をきく前には自然と背筋が伸び洗練された動きをするのだな…、
「お師匠さん、森野からお越しの名古屋さんをお連れしました。入ります」
「ちょ、ちょっとやまちゃん、」さすがにそれは失礼だろ…、と永川が客人の名を正す間もなく、襖の奥から返事が聞こえた。

「ご苦労。入りんさい」


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