023

食卓をひっくり返す勢いで身を乗り出した森野に圧倒され、永川とドアラは、思わず尻ひとつぶんだけ飛び退いた。
「頼む!ぜ、是非っ会わせてくれっ、俺はっ、」
「ちょっ、待って落ち着いて、とりあえず、飲み込んでから喋れ!!」
永川は自分が咄嗟に後ろへ引いていたことに安堵した、そうでなければ森野の口から飛んだ米粒の直撃を受けていたことだろう。
「は…っ、すまん、申し訳ない。だがどうしても俺は、その人に会いたいんだ!」
気難しいと評判の、しかもこれだけの男を弟子にもつ武芸の師匠。面会はかなうのか。森野は机に両手をついて永川の眼をみつめる。
永川の口から声が出るまで、その間が、長く感じられる。
果たして。その答えは。

「いいよ」


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