015
翌朝、小屋の外から突然ものすごい破裂音がして、森野はあわてて飛び起きた。見れば、すでに永川の姿は寝床にない。
土間で随分寝返りをうったらしく土だらけになって眠りこけているドアラを跨いで急ぎ小屋の外へ出てみると、脇のほうから物音がする。
何事かと不審に思って森野が覗くと、そこには永川が、袖を捲って大弓に矢をつがえていた。
「おい…、」
何をしてる、と声をかけようとして、森野は思わずその言葉を飲み込んでいた。ぐっと弓を引きはじめた永川に気圧されたのだ。
じっとその様子を見守っていると、やがて、ひょう、と空気を切り裂く音がして、その矢は前方…、
大きな木から伸びる、人の二の腕ほどもある枝の根元を直撃したと思うと、枝は先刻と同じ破裂音を響かせ、粉々に砕け散ったのだ!
その一連の動作が終わると永川は、ふう、と一息ついてすぐに、森野のほうを向いて言った。
「お早うさん、やっぱり起こしたか、すまない」
朝から騒音を立て睡眠を妨げたことを永川は軽く詫びたが、森野はそんなことよりも、今、目の前で行われたのは一体なんだったのか、すぐにもそれを問い詰めたくて仕方がなかった。
常人が同じことをしようと思えばまず散弾銃が必要だ、しかも至近距離でなければ、一撃で目標を粉々にすることはできないはずだ。
「今のは、一体。…どういう仕掛けだ!?」
「え、いやっ、別に仕掛けってほどのこともなくて…、…まあ、ちょっと、気合を…」
森野があまりにすごい剣幕で寄ってきて、その暑苦しい睫毛をばちばちさせながら詰問するので、永川は思わずしどろもどろになりながら、どうにか、説明になっていないような説明をした。
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