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その外見に違わず、案内された小屋の内部はとても質素な印象だったが…、
土間の奥の座敷の縁に無造作に置かれていた敷物は、強く森野の目をひいた。
鮮やかすぎる青色に長い毛足。これはスラィリーの毛皮だ、と森野は直感した。
まともに購入すれば目玉の飛び出るような高級品のはずだから、卸値も相当なものに違いないが、腕利きの猟師と名高い永川にとっては、
これを一枚売却するかどうかなどはきっと大した問題ではないのだろう。
永川は比較的恵まれた体格をした森野よりもさらに背が高く、体つきもやはり精悍であったが、その表情は柔和で、
もみあげから繋がるあごひげを蓄えてはいるものの、歴戦のハンターという肩書きに似合わず、恐らくはまだ年若いように見受けられた。
もしかすると、自分よりも若いかもしれない…、とも森野は思った。
森野は知るべくもないが、この推測は的確であり、森野の29歳に対して永川は27歳である。
この若さですでに、遠く名古屋まで名がとどろくほどの実力の持ち主とは。
一体、どれだけ幼いころから、如何にして鍛え上げられてきたのだろうか。森野は思いを巡らさずにいられなかった。
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