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『腕利きのスラィリーハンター』、その言葉がまさに自分を指していることを、永川はもちろん理解していた。
実際、このあたりではそう噂されているし、地方局から取材を受けることもある。手を組もうという誘いも多くあるが、
永川がその手の誘いに乗ることは決してない。
その理由は至極単純で、スラィリーハントを赤の他人と組んで行うことは、危険なのだ。
捕獲に成功すれば、キロあたり数万円もの価格で取引されることも珍しくないスラィリーだが、
周知のとおり、熟練のハンターでもその捕獲には相当のリスクを冒している。
まして、自分たちだけでハントに出かけられないような連中と組んでは、自分も命を落としかねない。
さらに言えば…、スラィリー狩りの最中は、殺人には絶好の機会である。銃があり、山奥で、人が死んでもおかしくない。
力をあわせてどうにか倒したスラィリーであっても、捕獲に成功した瞬間からその肉塊は金塊に等しく、
信頼のおける仲間とでなければ、いつ誰が金に目を眩ませ、自分の命を狙うかわからない…。
「わざわざ来てくれたのにすまないが、俺は決まった仲間以外とは組まないんだ。
理由は、…あんたも、ドアラマスターともあろう人なら、わかるだろ」
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