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「神戸軍」という名への激しい怒り憎しみが彼を突き動かしたのだろう。大の字に寝転んだまま斬れと言い放った舌の根も乾かぬうち身体を捩り、次には立ち上がり、よろめきながら前田のすぐそばまで近づいてきて、その拳を振り回した。
しかし、前田とまともに一合を打ち合ったのだ…、その衝撃で全身に回った痺れがまだ多分に残っているだろう。一撃を掠めることもなく、さらには勢い余って、再びその場に倒れ込んだ。

「畜生…、畜生…!」
「ほんなら、なんで俺を襲った」
「ええから早よ斬れっちゅんじゃゴラ!大体お前が何者やっちゅーんや、この化け物!」
「答えんか、なんで俺を襲ったかと聞いとるんじゃ」
「何でも何もないわ!生きとってもしゃあないねん!野郎!殺せ!」

前田は三たび同じ質問をしたが、これでは埒があかない。
暫時、少年の双眸をきつく見つめると、今度は躊躇いなくスラリと刀を抜き放ち、その切先を眉間に突きつけた。

「……っ」

少年の喉が鳴る。目の前の刃に奪われた罵声が、唾液と一緒に胃へ下ってゆく。


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