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「俺は忙しいから、お前選んどいてくれよ」
「嫌ですよ」
「嫌ってなんだよ」
「あ、嫌ってこともないですけど。誰が選んでも、それが中佐のおすすめメニューだと思われることには変わりないですよ」
「…確かに。まったくだ。クソ、なんで今日に限ってそれなんだ」

井端は頭を抱えた。そこへ、開けっ放しのドアをくぐって李が入ってくる。

「なんだ、まだ行ってないのか。早くしないと食堂が売り切れるぞ。ウーパールーパーが食いたいなら、話は別だが」

そう言いながら李はプラスチックの盆を静かに応接テーブルの上へ置いた。グランパス汁と白飯が湯気を立てている。

「いや…、別に食いたくはないが…、他人に勧めるならどっちがいいと思う」
「ああ、山本大尉か。悩むまでもない。断然グランパスだろう」
「そう言いたいところだが、相手が反捕グラ主義者でないかどうかがわからないんだ」
「主義なんぞに関わらず、ウーパールーパーはお勧めできないと思うがな。まあ、時々メニューに出るってことはあれで美味いのかもしれない、カエルみたいなものだろうし」

ソファに腰掛けると同時に李は割り箸をパチンと割り、汁をかき混ぜた。生姜のきいた醤油の香りが辺りに漂う。

「カエルみたいなって言われましても。…お国ではカエルを食べるんですか?」
「そういう文化もあるな」
「ビョンさんは。食べないのか」
「食べない。あんなのは珍味だ。食いたい奴が食うものだ」

李はキッパリと言い切った。無事クジラを確保した自分にはその話は関係ないとでも言わんばかりの勢いだ。

「じゃあ結局ダメなんじゃないか」
「私個人は食べないと言ってるだけだ、大尉の口にあわんとは限らんぞ。何なら、ウーパールーパーだと言わずに持っていけばいいことだ」
「それだったら、グランパスと言わずに汁を持っていったほうが良心的なんじゃないですか?」
「どっちも良心的ではないだろ」


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